入居者に褥瘡(床ずれ)ができてしまった

褥瘡(いわゆる床ずれ)についても比較的裁判になることが多いトラブルです。褥瘡が問題になる場合は、大きく分けて2つあります。1つは褥瘡の発生を予防する義務、もう1つは褥瘡が発生してしまった場合の管理義務です。

 

裁判になった場合、骨折・転倒や誤嚥・誤食と同じように、予見可能性及び回避可能性が問題になります。予見可能性については、被介護者が高齢者であるという事情のみならず、被介護者の具体的な状態(健康状態、栄養状態、衛生状態等)、過去に褥瘡を発生していたかどうか、糖尿病などの褥瘡の危険因子を有していたか、施設入所前に医師や看護師から褥瘡治療についての情報提供を受けていたか、といった事情が考慮されます。

 

結果回避可能性については、体位変換や衛生状態の確保、栄養状態の確保、医療機関の受診の有無や時期といったことが考慮されます。基本的な褥瘡予防手段である体位変換については2時間おきの体位変換が義務として求められることが多くあります。しかし、大切なのは体位変換それ自体ではなく、除圧であり、たとえば体圧分散マットレスの使用などにより2時間おきではなくともよいとされます。そのため、個別具体的な事情を考慮してどの程度体位変換をすれば義務を果たしていたといえるのかは施設側で主張する必要があります。

 

それゆえ、高齢者であり褥瘡が生じてしまったからといって直ちに法的責任が発生するわけではありません。法的責任の有無については弁護士と相談することをお薦めいたします。そして仮に法的責任を負う場合であっても、裁判になるまえにきちんと被介護者か家族に説明を尽くすことや、示談交渉をすることで未然に紛争が大きくなることを防ぐことができます。