解雇・退職問題
介護の現場では、恵まれない労働環境を原因として職員が離職することが多いと思います。
職員の離職すなわち労働契約が終了する場面は、使用者の一方的意思表示により労働契約を解約する解雇と解雇以外の事由によって労働契約を終了させる退職の2つに区分することができます。
解雇には普通解雇(通常解雇、整理解雇は普通解雇の一種)と懲戒解雇があります。
普通解雇は、本人の能力不足等会社が労働契約の継続が困難と判断した場合に使用者の解雇権(民法627条、同628条)に基づいてなされる解雇です。
懲戒解雇とは従業員の十代な企業秩序違反行為に対する制裁(懲戒処分)としてなされる解雇です。
解雇の場合、解雇権濫用法理が適用され、客観的に合理的な事由を欠き、社会通念上相当でない場合は解雇が無効となります(労働契約法15条、16条)。懲戒解雇については普通解雇よりも従業員に重大な不利益を及ぼすので、解雇権濫用法理の適用においても普通解雇より厳しい規制に服します。
そのため、従業員を安易に解雇したり懲戒解雇したりすると、解雇が無効となるだけでなく、事業主が損害賠償責任を問われる可能性があります。意に反して在職を認めることにもなります。辞めるときは何も言っていなかったのに、その後の就職がうまくいかずに腹いせに解雇無効を訴えてくる場合もあります。
また、勤務態度が悪かった従業員に退職してもらったのに、後に辞職や合意退職の意思表示の無効等を主張し退職が無効であり労働契約が継続していると主張されることもあります。退職勧奨については、労働者の任意の意思を尊重し、社会通念上相当といえる範囲で行う分には違法ではありませんが、説得の手段や方法が相当といえる範囲を逸脱すると違法行為となります。また、意思表示の無効等の主張を防ぐためにも最低でも退職届けは提出させておく必要があります。
従業員の解雇、退職で不安に思われたら弁護士にご相談ください。